この章で学ぶこと
ベクトルは「大きさ」と「向き」の両方を持つ量で、これまで数I・数A・数IIで別々に扱ってきた図形の性質(平行・垂直・内分・外分・重心)を、成分という数の組にそろえて統一的に計算できるようにする道具である。前半(1. ベクトルの演算、2. 内積)で和・差・実数倍・大きさ・平行条件・垂直条件という基本演算を固め、後半(3. 位置ベクトルと図形)でそれを内分点・外分点・重心・共線条件・交点といった図形の問題に応用し、最後(4. 空間ベクトル)で同じ考え方が成分を1つ増やすだけでそのまま3次元の空間図形にも通用することを確認する。数学Bの数列で身につけた「一般項の式で表す」考え方とは異なり、ここでは図形をベクトルという矢印の言葉に翻訳する見方が中心になる。ここで身につけた成分計算・内積・位置ベクトルの扱いは、数学C第2章「平面上の曲線と複素数平面」で媒介変数表示や複素数の演算を学ぶときにも、そのままの形で土台になる。
学習の順路
下から順番に読み進めよう。1〜2で「ベクトルどうしの計算」という土台を固め、3で「図形の問題への応用」に進み、4で「平面から空間への拡張」を行う、という流れになっている。
- 1. ベクトルの演算 ― ベクトルの意味、和・差・実数倍、成分表示、平行条件とベクトルの分解を学ぶ。
- 2. 内積 ― 2つのベクトルから1つの数(スカラー)を作る内積の定義・成分計算・なす角・垂直条件・展開公式を学ぶ。
- 3. 位置ベクトルと図形 ― 内分点・外分点・重心の公式、3点が一直線上にある条件、線分の交点の求め方、直線・円のベクトル方程式を学ぶ。
- 4. 空間ベクトル ― x,y,zの3成分に増やすだけで、これまでの公式がそのまま通用することを確認しながら、空間座標・内積・位置ベクトル・球面の方程式を学ぶ。
要点整理 ベクトルの基本計算
成分どうしの和・差・実数倍は、ふつうの数の計算とまったく同じ感覚でよい。テスト直前に思い出すべきは「どの公式をいつ使うか」の判断基準だ。
いつ使う? 「〇〇を成分で求めよ」と聞かれたら、まずこれで機械的に計算する。
いつ使う? 「長さ」「距離」を聞かれたら、成分の2乗和のルート。
いつ使う? 「平行かどうか」「一直線上にあるかどうか」を確かめたいとき。比の形(分数)は分母が0になる場合があるので使わない。
要点整理 内積
内積はベクトル2本から「ただの数」を1つ作る計算。「角度から求める式」と「成分から求める式」の2通りがあることと、そのうち圧倒的によく使うのは垂直条件だということを押さえておこう。
いつ使う? 大きさとなす角が分かっている(または求めたい)とき。
いつ使う? 成分が分かっているとき。角度を経由する必要がなく圧倒的に速い。
いつ使う? 「垂直」「直角」「なす角が90°」というキーワードを見たら、内積を計算して0とおくだけ。テストで最もよく使う形。
\(\cos\theta=\dfrac{\vec{a}\cdot\vec{b}}{|\vec{a}||\vec{b}|}\)。内積と2つの大きさを成分から出し、この式に代入する。
自分自身との内積は大きさの2乗。展開公式の土台になる関係。
\(|\vec{a}+\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2\)。\((\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}+\vec{b})\)と書き直して分配法則。
要点整理 位置ベクトルと図形
点Oを基準にした位置ベクトルを使うと、内分・外分・重心・共線という図形の性質がすべて「係数付きの足し算」で表せる。まずどの公式を使う場面かを見分けよう。
\(\vec{p}=\dfrac{n\vec{a}+m\vec{b}}{m+n}\)
いつ使う? 線分「上」の点。
\(\vec{q}=\dfrac{-n\vec{a}+m\vec{b}}{m-n}\)
いつ使う? 線分の延長線「上」の点。
\(\vec{g}=\dfrac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3}\)
いつ使う? 3頂点の位置ベクトルが分かっているとき。
いつ使う? 「一直線上にあることを示せ」、または逆に「係数の和が1になっている式」を見たら、その点が直線AB上にあると読み取れる。
いつ使う? 「線分ANと線分BMの交点Pを求めよ」のような設問。\(\vec{a},\vec{b}\)が一次独立(平行でなくどちらも\(\vec{0}\)でない)なら表し方はただ1通りなので、係数比較がそのまま使える。
要点整理 空間ベクトル
空間ベクトルは、成分が2つから3つに増えるだけで、これまでの公式の形は一切変わらない。「何が変わって、何が変わらないか」を意識するのがいちばんの近道。
いつ使う? 展開された形の方程式が与えられたら、\(x,y,z\)それぞれで平方完成して中心と半径を読み取る(円のときと同じ手順)。
この章全体を横断する総合演習、全25問。目標時間は30分。答えを入力して「採点」を押すと○×が出るぞ。分数は「-1/2」のように、√は「√5」または「sqrt5」のように入力。
わからないときは「解説を見る」で解き方を確認しよう。
\(\vec{a}=(4,\ -3)\)、\(\vec{b}=(-2,\ 6)\) のとき、\(\vec{a}+\vec{b}\) を成分で求めよ。
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\(\vec{a}=(1,\ 4)\)、\(\vec{b}=(3,\ -2)\) のとき、\(3\vec{a}-2\vec{b}\) を成分で求めよ。
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\(\vec{a}=(6,\ 8)\) の大きさ \(|\vec{a}|\) を求めよ。
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\(\vec{a}=(3,\ -1)\)、\(\vec{b}=(-9,\ 3)\) は平行である。\(\vec{b}=k\vec{a}\) を満たす実数 \(k\) を求めよ。
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\(\vec{a}=(2,\ 1)\)、\(\vec{b}=(1,\ 3)\)、\(\vec{c}=(7,\ 11)\) のとき、\(\vec{c}=s\vec{a}+t\vec{b}\) を満たす \(s,\ t\) の値を求めよ。
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\(\vec{a}=(3,\ -2)\)、\(\vec{b}=(4,\ 5)\) のとき、\(\vec{a}\cdot\vec{b}\) を求めよ。
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\(|\vec{a}|=6\)、\(|\vec{b}|=4\)、\(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) のなす角が \(60^\circ\) のとき、\(\vec{a}\cdot\vec{b}\) を求めよ。
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\(\vec{a}=(4,\ -3)\)、\(\vec{b}=(t,\ 8)\) が垂直であるとき、\(t\) の値を求めよ。
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\(|\vec{a}|=2\)、\(|\vec{b}|=3\)、\(\vec{a}\cdot\vec{b}=-1\) のとき、\(|\vec{a}+\vec{b}|\) を求めよ。
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\(A(1,\ 4)\)、\(B(7,\ -2)\) について、線分ABを \(2:1\) に内分する点Pの座標を求めよ。
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\(A(1,\ 2)\)、\(B(4,\ 5)\) について、線分ABを \(2:1\) に外分する点Qの座標を求めよ。
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\(A(2,\ 5)\)、\(B(-1,\ 3)\)、\(C(8,\ -2)\) を頂点とする三角形の重心Gの座標を求めよ。
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\(A(1,\ 1)\)、\(B(4,\ 3)\)、\(P(10,\ 7)\) について、3点が一直線上にあるかどうかを調べ、あるならば \(\overrightarrow{AP}=k\overrightarrow{AB}\) となる \(k\) を求めよ。
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2点 \(A(1,\ 0,\ 2)\)、\(B(4,\ 4,\ 14)\) について、\(\overrightarrow{AB}\) の成分と大きさを求めよ。
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\(\vec{a}=(2,\ -1,\ 3)\)、\(\vec{b}=(1,\ 5,\ 1)\) は垂直であるかどうか調べよ。
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\(A(3,\ -2,\ 1)\)、\(B(-1,\ 4,\ 5)\)、\(C(4,\ 1,\ -3)\) を頂点とする三角形の重心Gの座標を求めよ。
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方程式 \(x^2+y^2+z^2-6x+4y-2z+5=0\) が表す球面の中心と半径を求めよ。
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\(\vec{a}=(x,\ 3)\)、\(\vec{b}=(4,\ x+1)\) が平行であるとき、\(x\) の値をすべて求めよ。(コンマ区切りで入力)
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三角形OABにおいて、\(\overrightarrow{OA}=\vec{a}=(1,\ 3)\)、\(\overrightarrow{OB}=\vec{b}=(3,\ 1)\) とする。辺OB上の点Pを \(\overrightarrow{OP}=t\vec{b}\)(\(t\)は実数)となるようにとり、\(\overrightarrow{AP}\perp\overrightarrow{OB}\) となるように \(t\) の値を求めよ。
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三角形OABにおいて、\(\overrightarrow{OA}=\vec{a}\)、\(\overrightarrow{OB}=\vec{b}\) とする。辺OA上に \(\overrightarrow{OC}=\dfrac23\vec{a}\) となる点Cを、辺OB上に \(\overrightarrow{OD}=\dfrac12\vec{b}\) となる点Dをとる。線分CDを \(1:2\) に内分する点をPとするとき、\(\overrightarrow{OP}=s\vec{a}+t\vec{b}\) と表される。\(s,\ t\) の値を求めよ。
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三角形OABにおいて、\(\overrightarrow{OA}=\vec{a}=(5,\ 1)\)、\(\overrightarrow{OB}=\vec{b}=(2,\ 4)\) であるとき、三角形OABの面積 \(S\) を求めよ。次の面積公式を利用してよい。
\(S=\dfrac12\sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2-(\vec{a}\cdot\vec{b})^2}\)
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\(\vec{a}=(3,\ -4)\) と平行で、大きさが \(10\) であるベクトル \(\vec{b}\) を求めよ。\(\vec{a}\)と同じ向きのときと、逆向きのときの両方を答えよ。
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3点 \(A(1,\ 2)\)、\(B(4,\ 8)\)、\(C(m,\ 20)\) が一直線上にあるとき、\(m\) の値を求めよ。
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空間内の三角形OABにおいて、\(\overrightarrow{OA}=\vec{a}=(1,\ 0,\ 1)\)、\(\overrightarrow{OB}=\vec{b}=(0,\ 2,\ 1)\) とする。辺OB上の点Pを \(\overrightarrow{OP}=t\vec{b}\)(\(t\)は実数)となるようにとり、\(\overrightarrow{AP}\perp\overrightarrow{OB}\) となるように \(t\) の値を求めよ。
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点 \(A(1,\ 2,\ -1)\) を中心とし、点 \(B(4,\ 6,\ -1)\) を通る球面がある。この球面の半径 \(r\) を求めよ。また、この球面上に点 \(C(1,\ 2,\ -6)\) があるかどうかを、距離 \(AC\) を求めて調べよ。
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答えだけでなく「なぜそうなるか」を文章と式で書く練習。模範解答と見比べて、書き方の型を身につけよう。
この章では、内分点の公式・外分点の公式・共線条件という一見別々の公式が登場する。これらが実はすべて「係数の和が1になる形で点を表す」という同じ考え方から生まれていることを、内分点の公式の導出過程に触れながら説明せよ。
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平面ベクトルの成分計算(大きさ・内積・垂直条件・内分点の公式)は、空間ベクトルでも形をまったく変えずに使える。成分が2つから3つに増えることで、実際には何が変わり、何が変わらないのかを説明せよ。
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太郎「僕の歩いた道と、花子さんの歩いた道、噴水のところでちょうど直角に交わっているように見えるね。」
花子「じゃあ、その条件を使って、私が歩いた距離を求めてみようか。」
\(\overrightarrow{OA}=(8,\ 6)\) とする。太郎さんの歩いた距離 \(|\overrightarrow{OA}|\) を求めると \(|\overrightarrow{OA}|=\boxed{\text{アイ}}\) である。また \(\overrightarrow{OB}=(t,\ t-14)\) として、内積 \(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB}\) を \(t\) の式で表すと \(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB}=\boxed{\text{ウエ}}\,t-\boxed{\text{オカ}}\) となる。
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2人の歩いた道が噴水の位置で直角に交わっている、つまり \(\overrightarrow{OA}\perp\overrightarrow{OB}\) であることを用いて、\(t\) の値を求めよ。また、そのときの花子さんの歩いた距離 \(|\overrightarrow{OB}|\) を求めよ。
\(t=\boxed{\text{キ}}\)、花子さんの歩いた距離は\(\boxed{\text{クケ}}\)mである。
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(2)で求めた \(t\) を用いるとき、ベンチAと時計台Bの間の距離 \(AB\) を求めると、\(AB=\boxed{\text{コサ}}\sqrt{\boxed{\text{シ}}}\) mである。
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\(\overrightarrow{OC}\)、\(\overrightarrow{OD}\) を \(\vec{a}\)、\(\vec{b}\) を用いて表すと、\(\overrightarrow{OC}=\dfrac{\boxed{\text{ア}}}{\boxed{\text{イ}}}\vec{a}\)、\(\overrightarrow{OD}=\dfrac{\boxed{\text{ウ}}}{\boxed{\text{エ}}}\vec{b}\) である。
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Pは線分AD上の点なので、実数\(s\)を用いて \(\overrightarrow{OP}=(1-s)\vec{a}+s\overrightarrow{OD}\) と表せる。また、Pは線分BC上の点なので、実数\(t\)を用いて \(\overrightarrow{OP}=(1-t)\vec{b}+t\overrightarrow{OC}\) と表せる。\(\vec{a}\)、\(\vec{b}\)の係数をそれぞれ比較して、\(s,\ t\) の値を求めよ。
\(s=\dfrac{\boxed{\text{カ}}}{\boxed{\text{キ}}}\)、\(t=\dfrac{\boxed{\text{ク}}}{\boxed{\text{ケ}}}\)
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(2)の結果を用いて、\(\overrightarrow{OP}\) を \(\vec{a}\)、\(\vec{b}\) を用いて表すと、\(\overrightarrow{OP}=\dfrac{\boxed{\text{コ}}}{\boxed{\text{サ}}}\vec{a}+\dfrac{\boxed{\text{シ}}}{\boxed{\text{ス}}}\vec{b}\) である。