この章で学ぶこと

この章「統計的な推測」は数学Bの最後の単元であり、数学A『場合の数と確率』で培った確率計算の力を土台に、確率を「数値の集まり全体の性質」として扱う視点へと発展させる章である。1章ではまず確率変数という考え方を導入し、期待値・分散という「散らばりを数値化する道具」を身につける。ここでΣ記号を使った計算が繰り返し登場するが、これは前の章「数列」で鍛えたΣの技術がそのまま活きる場面であり、数列の章とのつながりが強く意識される。2章では、多数回の独立試行という具体的な状況(二項分布)から、なめらかな理想形(正規分布)へと視野を広げ、正規分布表という実用的な道具を使えるようにする。3章では、ここまでの知識を総動員して、「手元の限られたデータから、見えない母集団の姿を推測する」という統計学本来の目的、すなわち推定と仮説検定にたどり着く。世論調査で見る「信頼区間」や、ニュースで耳にする「有意差」という言葉の意味は、すべてこの章で学ぶ考え方に基づいており、数学Bの学習全体はこの章をもって一区切りする。

学習の順路

下から順番に読み進めよう。1で確率変数そのものの扱い方(期待値・分散の一般公式)を固め、2ではその応用として「同じ試行をくり返す」二項分布と、確率を面積として読み取る正規分布を学ぶ。3では、ここまでの知識を逆向きに使って、手元のデータから母集団の姿を推測する、という流れになっている。

  1. 1. 確率変数と確率分布 ― 確率変数・確率分布表の基本、期待値・分散の計算、\(aX+b\)の公式、独立な確率変数の和の性質を学ぶ。
  2. 2. 二項分布・正規分布 ― 二項分布\(B(n,p)\)の期待値・分散の公式、正規分布の標準化と正規分布表の読み方、二項分布の正規近似を学ぶ。
  3. 3. 推定・仮説検定 ― 標本平均の分布、母平均・母比率の信頼区間、仮説検定の4手順、生データから不偏分散を求める方法を学ぶ。

要点整理 確率変数の基本公式

この章の計算はすべて、1章で学んだこれらの公式の組み合わせでできている。まずはこの土台をいつでも取り出せる状態にしておこう。

期待値と分散の定義 \[E(X) = \sum x_ip_i\] \[V(X) = \sum (x_i-m)^2p_i = E(X^2)-\{E(X)\}^2\ \ (m=E(X))\] 分散はもともと「平均からの散らばり(偏差)の2乗の平均」として定義される(左の式)。実際の計算では、これと同じ値になる「2乗の期待値」から「期待値の2乗」を引く式(右の式)を使うほうが速い。分散は必ず0以上になる。
\(aX+b\)(1つの確率変数を変形)
\(E(aX+b)=aE(X)+b\)
\(V(aX+b)=a^2V(X)\)
いつ使うか:単位を変える・得点をポイントに換算するなど、1つの確率変数に一定の計算を施すとき。
独立な確率変数の和(2つを組み合わせる)
\(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)(独立かどうかに関わらず常に成立)
\(V(X+Y)=V(X)+V(Y)\)(\(X,\ Y\)が独立のときだけ成立)
いつ使うか:同じ試行を複数回くり返す・2つの確率変数の合計を考えるとき。

要点整理 二項分布と正規分布の使い分け

2章では、この基本公式を毎回計算しなくても済む「専用の近道」(二項分布の公式)と、確率を面積として読み取る新しい道具(正規分布表)を学んだ。どちらを使うかは、聞かれている内容で判断する。

\(X\sim B(n,p)\)のとき \(E(X)=np\)、\(V(X)=np(1-p)\)、\(\sigma(X)=\sqrt{np(1-p)}\)
標準化 \(Z=\dfrac{X-\mu}{\sigma}\)(\(X\sim N(\mu,\sigma^2)\)なら\(Z\sim N(0,1)\))
平均・分散がほしいだけ
二項分布の公式\(np\)、\(np(1-p)\)にそのまま代入すればよい。分布の形は関係ない。
ある範囲に入る確率がほしい
標準化してから正規分布表\(p(z)\)を読む(4パターン、下の box)。二項分布でも\(n\)が大きければ正規近似でよい。
ちょうど\(k\)回になる確率がほしい
二項分布の公式\(P(X=k)={}_n\mathrm{C}_k\,p^k(1-p)^{n-k}\)を直接使う(正規分布は使えない)。
正規分布表の4パターン(\(p(z)=P(0\le Z\le z)\))
両側対称(\(\mu-z\sigma\le X\le\mu+z\sigma\))→ \(2p(z)\) / 平均から片側だけ → \(p(z)\) / 平均より先の端まで → \(0.5-p(z)\) / 片側の内側だけ(外側から内側を引く)→ \(p(z_2)-p(z_1)\)

要点整理 推定と仮説検定の型

3章では、母標準偏差\(\sigma\)が分かっている前提で標本平均から母平均・母比率を推測する方法と、逆に「ある仮説が正しいか」を検証する方法を学んだ。どちらも土台は同じ「標準誤差」という1つの量である。

標準誤差(すべての計算の土台)
母平均の推定:\(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) / 母比率の推定:\(\sqrt{\dfrac{\hat p(1-\hat p)}{n}}\)
信頼区間(推定)
\(\overline{x}\pm1.96\times\text{標準誤差}\)(信頼度95%のとき)
いつ使うか:標本から母平均・母比率を「範囲」で言い当てたいとき。
仮説検定
まず「変化していない」という仮説\(H_0\)(否定したい方の仮説。帰無仮説と呼ぶ)を立て、検定統計量\(z=\dfrac{\overline{x}-\mu_0}{\sigma/\sqrt{n}}\)を棄却域\(|z|>1.96\)(両側5%)と比べる
いつ使うか:「変化した」「差がある」といった主張を、データにもとづいて判断したいとき。
信頼区間と検定はつながっている 検定したい値\(\mu_0\)が95%信頼区間の外にあれば、有意水準5%の両側検定で\(H_0:\mu=\mu_0\)を棄却できる(逆に区間の中にあれば棄却できない)。2つの手続きは同じ計算を裏表から見ているだけである。
まとめテスト(標準)

この章全体を横断する総合演習、全25問。目標時間は30分。答えを入力して「採点」を押すと○×が出るぞ。分数は「-1/2」のように入力。検定の結論は「棄却できる」または「棄却できない」で入力しよう。
わからないときは「解説を見る」で解き方を確認しよう。

基本(1〜15)
1
期待値の基本

1個のさいころを1回投げ、出た目が3の倍数なら15点、それ以外なら0点を得るとする。得点を \(X\) とするとき、期待値 \(E(X)\) を求めよ。

\(E(X)=\)
解説を見る
3の倍数(3,6)が出る確率は \(\dfrac{2}{6}=\dfrac{1}{3}\)。よって \(X=15,0\) がそれぞれ確率 \(\dfrac{1}{3},\dfrac{2}{3}\)。 \(E(X) = 15\times\dfrac{1}{3}+0\times\dfrac{2}{3} = 5\) \(E(X)=5\)
2
分散の基本(問1の続き)

問1の \(X\) について、分散 \(V(X)\) を求めよ。

\(V(X)=\)
解説を見る
\(E(X)=5\)(問1より)。 \(E(X^2) = 15^2\times\dfrac{1}{3}+0^2\times\dfrac{2}{3} = 225\times\dfrac{1}{3} = 75\) \(V(X) = E(X^2)-\{E(X)\}^2 = 75-5^2 = 75-25 = 50\) \(V(X)=50\)
3
aX+bの公式(数値だけで練習)

確率変数 \(X\) が \(E(X)=6\)、\(V(X)=9\) を満たすとき、\(Y=2X-5\) の期待値 \(E(Y)\) と分散 \(V(Y)\) を求めよ。

\(E(Y)=\)  \(V(Y)=\)
解説を見る
公式にそのまま当てはめる。 \(E(Y) = E(2X-5) = 2E(X)-5 = 2\times6-5 = 12-5 = 7\) \(V(Y) = V(2X-5) = 2^2V(X) = 4\times9 = 36\) \(E(Y)=7\)、\(V(Y)=36\)
4
独立な和の公式(数値だけで練習)

独立な確率変数 \(X,\ Y\) が \(E(X)=4\)、\(E(Y)=7\)、\(V(X)=3\)、\(V(Y)=5\) を満たすとき、\(S=X+Y\) の期待値 \(E(S)\) と分散 \(V(S)\) を求めよ。

\(E(S)=\)  \(V(S)=\)
解説を見る
期待値は独立でなくても常に成り立つ公式を使う。 \(E(S) = E(X)+E(Y) = 4+7 = 11\) 分散は \(X,\ Y\) が独立なので、そのままたし算できる。 \(V(S) = V(X)+V(Y) = 3+5 = 8\) \(E(S)=11\)、\(V(S)=8\)
5
二項分布の期待値

成功確率 \(\dfrac{1}{4}\) の試行を独立に48回くり返す。成功した回数を \(X\) とするとき、期待値 \(E(X)\) を求めよ。

\(E(X)=\)
解説を見る
\(X \sim B\!\left(48,\ \dfrac{1}{4}\right)\) \(E(X) = np = 48\times\dfrac{1}{4} = 12\) \(E(X)=12\)
6
二項分布の分散・標準偏差(問5の続き)

問5の \(X\)(\(B\!\left(48,\dfrac{1}{4}\right)\))について、分散 \(V(X)\) と標準偏差 \(\sigma(X)\) を求めよ。

\(V(X)=\)  \(\sigma(X)=\)
解説を見る
\(V(X) = np(1-p) = 48\times\dfrac{1}{4}\times\dfrac{3}{4} = 9\) \(\sigma(X) = \sqrt{9} = 3\) \(V(X)=9\)、\(\sigma(X)=3\)
7
標準化の基本

\(X \sim N(80, 5^2)\) のとき、\(X=90\) を標準化した値 \(Z\) を求めよ。

\(Z=\)
解説を見る
\(Z = \dfrac{X-\mu}{\sigma} = \dfrac{90-80}{5} = \dfrac{10}{5} = 2\) \(Z=2\)
8
正規分布表の基本の読み方(問7の続き)

問7の \(X \sim N(80, 5^2)\) について、\(P(80 \le X \le 90)\) を求めよ。

\(P(80 \le X \le 90)=\)
解説を見る
問7より \(Z=2.0\)。表より \(p(2.0)=0.4772\)。平均80から片側だけの範囲なので、そのまま表の値が答え。 \(P(80 \le X \le 90) = 0.4772\)
9
正規分布表・両側対称パターン

\(X \sim N(80, 5^2)\) のとき、\(P(70 \le X \le 90)\) を求めよ。

\(P(70 \le X \le 90)=\)
解説を見る
左端 \(Z_1 = \dfrac{70-80}{5} = -2.0\)、右端 \(Z_2 = \dfrac{90-80}{5} = 2.0\)。平均80を中心に左右対称な範囲なので \(P(70 \le X \le 90) = 2\,p(2.0) = 2\times0.4772 = 0.9544\) \(P(70 \le X \le 90) = 0.9544\)
10
正規分布表・平均より先の端までのパターン

\(X \sim N(80, 5^2)\) のとき、\(P(X \ge 87.5)\) を求めよ。

\(P(X \ge 87.5)=\)
解説を見る
\(Z = \dfrac{87.5-80}{5} = 1.5\)。表より \(p(1.5)=0.4332\)。平均より先の端までの範囲なので \(P(X \ge 87.5) = 0.5-p(1.5) = 0.5-0.4332 = 0.0668\) \(P(X \ge 87.5) = 0.0668\)
11
二項分布の正規近似・平均と標準偏差

1枚の硬貨を独立に144回投げるとき、表の出る回数を \(X\) とする。\(X\) を正規分布で近似するときの平均 \(\mu\) と標準偏差 \(\sigma\) を求めよ。

\(\mu=\)  \(\sigma=\)
解説を見る
\(X \sim B(144,\ 0.5)\) なので \(\mu = E(X) = 144\times0.5 = 72\) \(V(X) = 144\times0.5\times0.5 = 36\)、\(\sigma = \sqrt{36} = 6\) \(\mu=72\)、\(\sigma=6\)
12
母平均の95%信頼区間

母標準偏差18の母集団から、大きさ81の標本を抽出したところ、標本平均が140であった。母平均の95%信頼区間を求めよ。

下限  上限
解説を見る
標準誤差 \(\dfrac{18}{\sqrt{81}} = \dfrac{18}{9} = 2\) 誤差の範囲 \(1.96\times2 = 3.92\) \(136.08 \le \mu \le 143.92\)
13
母比率の95%信頼区間

100人にアンケートを行ったところ、50人がある提案に賛成と回答した。賛成率(母比率)の95%信頼区間を求めよ。

下限  上限
解説を見る
標本比率 \(\hat{p} = \dfrac{50}{100} = 0.5\) 標準誤差 \(\sqrt{\dfrac{0.5\times0.5}{100}} = \sqrt{0.0025} = 0.05\) 誤差の範囲 \(1.96\times0.05 = 0.098\) \(0.402 \le p \le 0.598\)
14
仮説検定・棄却できるケース

母標準偏差10の母集団について、帰無仮説 \(H_0: \mu = 60\) を有意水準5%で両側検定する。大きさ25の標本の標本平均が64であったとき、検定統計量 \(z\) と結論を求めよ。

\(z=\)  結論
解説を見る
\(z = \dfrac{64-60}{10/\sqrt{25}} = \dfrac{4}{2} = 2\) \(|z|=2 > 1.96\) なので棄却域に入る。 \(z=2\)、帰無仮説を棄却できる
15
仮説検定・棄却できないケース

母標準偏差9の母集団について、帰無仮説 \(H_0: \mu = 40\) を有意水準5%で両側検定する。大きさ81の標本の標本平均が41であったとき、検定統計量 \(z\) と結論を求めよ。

\(z=\)  結論
解説を見る
\(z = \dfrac{41-40}{9/\sqrt{81}} = \dfrac{1}{1} = 1\) \(|z|=1 < 1.96\) なので棄却域に入らない。 \(z=1\)、帰無仮説を棄却できない
発展(16〜25)
16
分布表から計算(3通りの当たり)

あるガチャガチャでは、大当たり(400円分のポイント)が確率0.1、中当たり(100円分)が確率0.3、はずれ(0円)が確率0.6で出るという。1回引いたときに得られるポイントを \(X\) とするとき、期待値 \(E(X)\) と分散 \(V(X)\) を求めよ。

\(E(X)=\)  \(V(X)=\)
解説を見る
\(X=400,100,0\) がそれぞれ確率 \(0.1,\ 0.3,\ 0.6\)。 \(E(X) = 400\times0.1+100\times0.3+0\times0.6 = 40+30 = 70\) \(E(X^2) = 400^2\times0.1+100^2\times0.3 = 16000+3000 = 19000\) \(V(X) = 19000-70^2 = 19000-4900 = 14100\) \(E(X)=70\)、\(V(X)=14100\)
17
二項分布の直接計算(公式\(P(X=k)\)を使う)

成功確率0.4のルーレットを独立に4回行うとき、ちょうど2回成功する確率を求めよ。

確率
解説を見る
成功回数を \(X\) とすると \(X \sim B(4,\ 0.4)\)。\(n=4,\ p=0.4,\ k=2\) を公式に代入する。 \(P(X=2) = {}_4\mathrm{C}_2\,(0.4)^2(0.6)^2\) \({}_4\mathrm{C}_2=6\)、\((0.4)^2=0.16\)、\((0.6)^2=0.36\) なので \(P(X=2) = 6\times0.16\times0.36 = 0.3456\) 分数で表すと \(0.4=\dfrac{2}{5},\ 0.6=\dfrac{3}{5}\) より \(P(X=2)=6\times\dfrac{4}{25}\times\dfrac{9}{25}=\dfrac{216}{625}\)。 確率は \(\dfrac{216}{625}\ (=0.3456)\)
18
正規分布表・外側から内側を引くパターン

\(X \sim N(40, 6^2)\) のとき、\(P(46 \le X \le 55)\) を求めよ。

\(P(46 \le X \le 55)=\)
解説を見る
\(Z_1 = \dfrac{46-40}{6} = 1.0\)、\(Z_2 = \dfrac{55-40}{6} = 2.5\)。両端とも平均40より右側(同じ側)なので、外側から内側を引く。 \(P(46 \le X \le 55) = p(2.5)-p(1.0) = 0.4938-0.3413 = 0.1525\) \(P(46 \le X \le 55) = 0.1525\)
19
正規分布の逆問題(上位%からxを逆算)

ある試験の得点 \(X\) は正規分布 \(N(55, 8^2)\) に従うとする。得点が上位2.28%に入るための最低点を求めよ。

最低点
解説を見る
求める最低点を \(x\)、対応する標準化した値を \(z\)(\(z>0\))とすると、「上位2.28%」は「平均より先の端までの範囲」の確率が \(0.0228\) ということなので \(0.5-p(z) = 0.0228\) より \(p(z) = 0.4772\) 表で \(p(z)=0.4772\) となる \(z\) を探すと \(z=2.0\)。 \(x = \mu+z\sigma = 55+2.0\times8 = 55+16 = 71\) 最低点は \(71\)(点以上が上位2.28%に入る)
20
信頼区間の誤差から必要な標本数を求める

母標準偏差が12と分かっている母集団について、信頼度95%の信頼区間の誤差(\(1.96\sigma/\sqrt{n}\))を1.5以下にしたい。必要な標本の大きさの最小値を求めよ(小数点以下切り上げ)。

最小のn
解説を見る
誤差の条件は \(1.96\times\dfrac{12}{\sqrt{n}} \le 1.5\) 両辺を整理すると \(\sqrt{n} \ge \dfrac{1.96\times12}{1.5} = \dfrac{23.52}{1.5} = 15.68\) 両辺を2乗して \(n \ge 15.68^2 = 245.8624\) \(n\)は整数なので切り上げて \(n = 246\)
21
独立な確率変数の線形結合

2個のさいころを同時に投げ、出た目をそれぞれ \(X,\ Y\)(独立)とする。\(W=4X-3Y+5\) とするとき、期待値 \(E(W)\) と分散 \(V(W)\) を求めよ。

\(E(W)=\)  \(V(W)=\)
解説を見る
\(E(X)=E(Y)=\dfrac{7}{2}\)、\(V(X)=V(Y)=\dfrac{35}{12}\)(1章より)。 期待値は独立でなくても「係数をかけて足す」だけでよい。 \(E(W) = 4E(X)-3E(Y)+5 = 4\times\dfrac{7}{2}-3\times\dfrac{7}{2}+5 = (4-3)\times\dfrac{7}{2}+5 = \dfrac{7}{2}+5 = \dfrac{17}{2}\) 分散は「係数を2乗してからたす」。定数\(+5\)は分散に影響しない。\(X,\ Y\) が独立なので単純にたし算できる。 \(V(W) = 4^2V(X)+(-3)^2V(Y) = 16\times\dfrac{35}{12}+9\times\dfrac{35}{12} = 25\times\dfrac{35}{12} = \dfrac{875}{12}\) \(E(W)=\dfrac{17}{2}\)、\(V(W)=\dfrac{875}{12}\)
22
二項分布の正規近似で確率を求める

ある工場で作られる部品の不良率は0.2であることがわかっている。この部品を独立に225個検査するとき、不良品の個数を \(X\) とする。\(X\) を正規分布で近似して、\(P(33 \le X \le 57)\) を求めよ。

\(P(33 \le X \le 57)=\)
解説を見る
\(X \sim B(225,\ 0.2)\) なので \(\mu = E(X) = 225\times0.2 = 45\) \(V(X) = 225\times0.2\times0.8 = 36\)、\(\sigma = \sqrt{36} = 6\) \(Z_1 = \dfrac{33-45}{6} = -2.0\)、\(Z_2 = \dfrac{57-45}{6} = 2.0\) 平均45を中心に左右対称な範囲(\(z=2.0\)の両側)なので \(P(33 \le X \le 57) \approx 2\,p(2.0) = 2\times0.4772 = 0.9544\) \(P(33 \le X \le 57) \approx 0.9544\)
23
片側検定(左側)

新しい薬を使うと回復までの日数が短くなると期待されている。従来の平均回復日数は10日(母標準偏差2.5日)であった。新しい薬を使った大きさ100の標本の標本平均が9.5日であったとき、有意水準5%で「回復日数が短くなった」と言えるか、片側検定(左側)で判断せよ。

\(z=\)  結論
解説を見る
「短くなったと言えるか」という片側だけの主張なので片側検定を使う。両側検定では棄却域を左右に半分ずつ(\(|z|>1.96\))割り振るが、片側検定では棄却域を片方だけに集めるので、有意水準5%に対応する境界値は表の「90%の行」と同じ1.64になる(3章の信頼度の表より。左片側なら \(z<-1.64\))。 帰無仮説 \(H_0:\mu=10\)、対立仮説 \(H_1:\mu<10\) \(z = \dfrac{9.5-10}{2.5/\sqrt{100}} = \dfrac{-0.5}{0.25} = -2\) 棄却域は \(z<-1.64\):\(-2 < -1.64\) なので棄却域に入る。 \(z=-2\)、有意水準5%で帰無仮説を棄却できる(短くなったと言える)
24
信頼区間と両側検定のつながり

母標準偏差16の母集団から大きさ64の標本をとり、母平均の95%信頼区間を求めたところ \([46.08,\ 53.92]\) であった。この結果をもとに、有意水準5%で帰無仮説 \(H_0:\mu=54\) を両側検定で棄却できるかどうかを判断せよ(考え方:\(\mu_0\)が信頼区間に含まれなければ棄却できる)。

結論
解説を見る
95%信頼区間と有意水準5%の両側検定は表裏一体の関係にある。「信頼区間に \(\mu_0\) が含まれる」ことと「有意水準5%で \(H_0:\mu=\mu_0\) を棄却できない」ことは同じ意味になる。 今回、信頼区間は \([46.08,\ 53.92]\) で、検定したい値 \(\mu_0=54\) はこの範囲の外(\(53.92 < 54\))。 \(\mu_0=54\)は信頼区間の外なので、有意水準5%で帰無仮説を棄却できる
25
生データ→不偏分散→信頼区間(章内総合)

ある工場で製造された9個の製品の重さ(g)を測定したところ、次のようになった。 \[40,\ 42,\ 44,\ 46,\ 48,\ 50,\ 52,\ 54,\ 56\] 標本平均 \(\overline{x}\) と不偏分散 \(u^2\) を求めよ。さらに、この不偏分散の平方根 \(u\) を母標準偏差の代わりに用いて、母平均の95%信頼区間を求めよ(下限・上限とも小数第2位まで)。

\(\overline{x}=\)  \(u^2=\)
下限  上限
解説を見る
標本平均 \(\overline{x} = \dfrac{40+42+44+46+48+50+52+54+56}{9} = \dfrac{432}{9} = 48\) 各データの偏差とその2乗 偏差:\(-8,\ -6,\ -4,\ -2,\ 0,\ 2,\ 4,\ 6,\ 8\) 2乗:\(64,\ 36,\ 16,\ 4,\ 0,\ 4,\ 16,\ 36,\ 64\) 偏差の2乗の和:\(64+36+16+4+0+4+16+36+64=240\) 不偏分散(\(n-1=8\)で割る) \(u^2 = \dfrac{240}{8} = 30\) この \(u\) を使った信頼区間 \(u=\sqrt{30}\approx5.477\)(母標準偏差\(\sigma\)が未知のときは、こうして標本から求めた \(u\) をその代わりに使う。3章STEP5の内容) 標準誤差 \(\dfrac{u}{\sqrt{9}} = \dfrac{\sqrt{30}}{3}\approx1.826\) 誤差の範囲 \(1.96\times1.826\approx3.58\) \(48-3.58=44.42\)、\(48+3.58=51.58\) \(\overline{x}=48\)(g)、\(u^2=30\)、母平均の95%信頼区間はおよそ \(44.42 \le \mu \le 51.58\)
記述チャレンジ

答えだけでなく「なぜそうなるか」を文章と式で書く練習。模範解答と見比べて、書き方の型を身につけよう。

記1

母平均の信頼区間は、なぜ「標本平均 ± 決まった値」という左右対称な形になるのか。標本平均の分布に関する性質(3章STEP1)と、正規分布の対称性に触れながら説明せよ。

模範解答を見る
標本平均 \(\overline{X}\) は、母平均 \(\mu\)、母標準偏差 \(\sigma\) の母集団から大きさ \(n\) の標本をとるとき、\(n\) が十分大きければ近似的に正規分布 \(N\!\left(\mu,\ \dfrac{\sigma^2}{n}\right)\) に従う。正規分布のグラフは平均を中心に左右対称な釣鐘型の曲線なので、\(\overline{X}\) が平均 \(\mu\) からどれだけ離れうるかという散らばり方も、\(\mu\) を中心にして左右対称になる。 標準化すると \(Z=\dfrac{\overline{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}\) は標準正規分布 \(N(0,1)\) に従い、この \(Z\) が \(-1.96\) から \(1.96\) の範囲に入る確率がちょうど \(0.95\) であることが、正規分布表からわかる。標準正規分布も \(Z=0\) を中心に左右対称なので、この範囲もつねに \(0\) を中心にした左右対称な形でとれる。 この不等式 \(-1.96\le\dfrac{\overline{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}\le1.96\) を、知りたい \(\mu\) について解き直すと \[\overline{X}-1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\ \le\ \mu\ \le\ \overline{X}+1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\] という形になる。この不等式の中心にあるのは標本平均 \(\overline{X}\) 自身であり、両端までの距離はどちらも同じ \(1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\)(標準誤差の1.96倍)である。これが「標本平均 ± 決まった値」という左右対称な形の正体である。 標本平均は近似的に正規分布に従い、正規分布は左右対称であることから、標準化した \(Z\) が0を中心に対称な範囲に入る確率を使って \(\mu\) の式に解き直すと、必ず標本平均を中心にした左右対称な信頼区間になる。
記2

二項分布の期待値・分散の公式 \(E(X)=np\)、\(V(X)=np(1-p)\)(2章)は、1章で学んだ確率変数の一般公式(期待値の一般式・独立な確率変数の和の性質)から、どのようにして導かれると考えられるか説明せよ。

模範解答を見る
二項分布 \(B(n,p)\) は「成功確率 \(p\) の試行を独立に \(n\) 回くり返したときの成功回数」の分布である。ここで、\(i\)回目の試行が成功なら\(1\)、失敗なら\(0\)の値をとる確率変数 \(X_i\) を考えると、成功回数 \(X\) は \(X=X_1+X_2+\cdots+X_n\) という、\(n\)個の確率変数の和として書くことができる。 まず1回分の \(X_i\) の期待値・分散を、1章の定義どおりに計算する。\(X_i\) は確率 \(p\) で\(1\)、確率 \(1-p\) で\(0\)をとるので \(E(X_i)=1\times p+0\times(1-p)=p\) \(X_i\) は\(0\)か\(1\)しかとらないので \(X_i^2=X_i\)、よって \(E(X_i^2)=E(X_i)=p\) \(V(X_i)=E(X_i^2)-\{E(X_i)\}^2=p-p^2=p(1-p)\) 各回の試行は独立なので、\(X_1,X_2,\ldots,X_n\) は互いに独立な確率変数である。1章で学んだ独立な確率変数の和の公式は、2個だけでなく確率変数がいくつあっても同じように成り立つので \(E(X)=E(X_1)+E(X_2)+\cdots+E(X_n)=\underbrace{p+p+\cdots+p}_{n\text{個}}=np\) \(V(X)=V(X_1)+V(X_2)+\cdots+V(X_n)=\underbrace{p(1-p)+\cdots+p(1-p)}_{n\text{個}}=np(1-p)\)(独立だからこそ、分散もそのままたし算できる) つまり \(E(X)=np\)、\(V(X)=np(1-p)\) という2章の公式は、新しい発想から来ているのではなく、1章の一般公式 \(E(X)=\sum x_ip_i\) と独立な和の性質 \(V(X+Y)=V(X)+V(Y)\) を、「0か1しかとらない確率変数を\(n\)個足し合わせる」という特別な状況にそのまま当てはめた結果である。 二項分布は「0/1しかとらない独立な確率変数をn個足し合わせたもの」とみなせるので、その期待値・分散は1章の一般公式(期待値の合計・独立な和の分散の合計)を適用した結果として導かれる。
共通テスト形式チャレンジ

大問1 目標時間 8分/配点 20点

花子さんのクラスでは、文化祭で輪投げゲームの模擬店を出すことになった。輪が的に入る確率は毎回0.2で、1人のお客さんが25回輪投げに挑戦する。先生と花子さんは、成功回数の散らばり方をもとに景品の準備数を考えている。

先生「1人のお客さんの25回のうち、輪が入った回数をXとしよう。それぞれの回は独立で、入る確率はいつも0.2だね。」
花子「じゃあXは二項分布に従いますね。まず平均と分散を求めてみます。」
(1)

\(X\sim B(25,\ 0.2)\) であるとして、期待値 \(E(X)=\boxed{\text{ア}}\)、分散 \(V(X)=\boxed{\text{イ}}\) を求めよ。

ア イ
解説を見る
二項分布の公式に代入する。 \(E(X) = np = 25\times0.2 = 5\) \(V(X) = np(1-p) = 25\times0.2\times0.8 = 4\) \(E(X)=5\)、\(V(X)=4\)
(2)

先生「1回成功するごとに、10ポイントのスタンプカードにスタンプを押してあげよう。」

25回のうち成功した回数を\(X\)とし、もらえるスタンプの合計を\(Y=10X\)とするとき、期待値 \(E(Y)=\boxed{\text{ウエ}}\)、分散 \(V(Y)=\boxed{\text{オカキ}}\) を求めよ。

ウエ オカキ
解説を見る
(1)の結果 \(E(X)=5,\ V(X)=4\) に、\(aX+b\)の公式(\(a=10,\ b=0\))を当てはめる。 \(E(Y) = 10E(X) = 10\times5 = 50\) \(V(Y) = 10^2V(X) = 100\times4 = 400\) \(E(Y)=50\)、\(V(Y)=400\)
(3)

先生「成功回数 \(X\) が、平均から標準偏差2つ分の範囲(\(\mu-2\sigma\)から\(\mu+2\sigma\)まで)に入る確率を、正規分布表を使って調べてみよう。」

この範囲は \(\boxed{\text{ク}}\) 回以上 \(\boxed{\text{ケ}}\) 回以下であり、正規分布表よりその確率はおよそ \(\boxed{\text{コサ.シス}}\)%である。

ク ケ コサ.シス
解説を見る
(1)より \(\mu=5,\ V(X)=4\) なので \(\sigma=\sqrt{4}=2\)。 \(\mu-2\sigma = 5-2\times2 = 1\)、\(\mu+2\sigma = 5+2\times2 = 9\) 標準化するとこの範囲はちょうど \(-2.0 \le Z \le 2.0\) にあたる。平均を中心に左右対称な範囲なので \(P(1 \le X \le 9) \approx 2\,p(2.0) = 2\times0.4772 = 0.9544\) パーセントに直すと \(95.44\)%。 \(1\)回以上\(9\)回以下、確率はおよそ\(95.44\)%

大問2 目標時間 8分/配点 20点

ある工場で作られるチョコレートの1箱あたりの重さは、従来200g、母標準偏差5gの分布に従うとされていた。品質管理担当の太郎さんは、新しく導入した製造ラインで重さの平均が変わっていないか調べている。

太郎「新しいラインから大きさ100個の標本をとって重さを測ったら、標本平均は202gでした。」
先生「まずは母平均の95%信頼区間を求めて、どれくらいの範囲に真の平均がありそうか見てみよう。」
(1)

母標準偏差5g、標本の大きさ100個、標本平均202gとして、母平均 \(\mu\) の95%信頼区間を求めると \(\boxed{\text{アイウ.エオ}} \le \mu \le \boxed{\text{カキク.ケコ}}\)(g)である。

アイウ.エオ カキク.ケコ
解説を見る
標準誤差 \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} = \dfrac{5}{\sqrt{100}} = \dfrac{5}{10} = 0.5\) 誤差の範囲 \(1.96\times0.5 = 0.98\) 信頼区間は \(202-0.98 \le \mu \le 202+0.98\) \(201.02 \le \mu \le 202.98\)
(2)

先生「では、実際に検定してみよう。有意水準5%で、母平均が従来の200gから変化したかどうかを両側検定してみよう。」

帰無仮説 \(H_0:\mu=200\) を有意水準5%で両側検定する。検定統計量は \(z=\boxed{\text{サ}}\) である。結論として正しいものを次から選び、その番号を \(\boxed{\text{シ}}\) に入れよ:1.棄却できる/2.棄却できない。

サ シ
解説を見る
標準誤差は(1)より \(0.5\)。 \(z = \dfrac{\overline{x}-\mu_0}{\sigma/\sqrt{n}} = \dfrac{202-200}{0.5} = \dfrac{2}{0.5} = 4\) 有意水準5%の棄却域は \(|z|>1.96\):\(4 > 1.96\) なので棄却域に入る。よって帰無仮説を棄却できる(重さの平均は変化したと言える)。選択肢は1。 \(z=4\)、シ=1(帰無仮説を棄却できる)
(3)

先生「実は、信頼区間だけを見ても、この検定と同じ結論が判断できるんだ。」

(1)の信頼区間 \([201.02,\ 202.98]\) の中に、帰無仮説の値 \(\mu_0=200\) が含まれるかどうかに着目すると、有意水準5%の両側検定で \(H_0:\mu=200\) についてどちらが正しいと判断できるか。次から選び、その番号を \(\boxed{\text{ス}}\) に入れよ:1.棄却できる/2.棄却できない。

ス
解説を見る
(1)で求めた信頼区間は \([201.02,\ 202.98]\) である。帰無仮説の値 \(\mu_0=200\) はこの区間の外側(\(200 < 201.02\))にある。 信頼区間の外にある値は、有意水準5%の両側検定で棄却できることに対応するので、(2)で直接計算した結果とも一致する。選択肢は1。 ス=1(信頼区間の外なので、有意水準5%で帰無仮説を棄却できる)