この章で学ぶこと
この章「統計的な推測」は数学Bの最後の単元であり、数学A『場合の数と確率』で培った確率計算の力を土台に、確率を「数値の集まり全体の性質」として扱う視点へと発展させる章である。1章ではまず確率変数という考え方を導入し、期待値・分散という「散らばりを数値化する道具」を身につける。ここでΣ記号を使った計算が繰り返し登場するが、これは前の章「数列」で鍛えたΣの技術がそのまま活きる場面であり、数列の章とのつながりが強く意識される。2章では、多数回の独立試行という具体的な状況(二項分布)から、なめらかな理想形(正規分布)へと視野を広げ、正規分布表という実用的な道具を使えるようにする。3章では、ここまでの知識を総動員して、「手元の限られたデータから、見えない母集団の姿を推測する」という統計学本来の目的、すなわち推定と仮説検定にたどり着く。世論調査で見る「信頼区間」や、ニュースで耳にする「有意差」という言葉の意味は、すべてこの章で学ぶ考え方に基づいており、数学Bの学習全体はこの章をもって一区切りする。
学習の順路
下から順番に読み進めよう。1で確率変数そのものの扱い方(期待値・分散の一般公式)を固め、2ではその応用として「同じ試行をくり返す」二項分布と、確率を面積として読み取る正規分布を学ぶ。3では、ここまでの知識を逆向きに使って、手元のデータから母集団の姿を推測する、という流れになっている。
- 1. 確率変数と確率分布 ― 確率変数・確率分布表の基本、期待値・分散の計算、\(aX+b\)の公式、独立な確率変数の和の性質を学ぶ。
- 2. 二項分布・正規分布 ― 二項分布\(B(n,p)\)の期待値・分散の公式、正規分布の標準化と正規分布表の読み方、二項分布の正規近似を学ぶ。
- 3. 推定・仮説検定 ― 標本平均の分布、母平均・母比率の信頼区間、仮説検定の4手順、生データから不偏分散を求める方法を学ぶ。
要点整理 確率変数の基本公式
この章の計算はすべて、1章で学んだこれらの公式の組み合わせでできている。まずはこの土台をいつでも取り出せる状態にしておこう。
\(E(aX+b)=aE(X)+b\)
\(V(aX+b)=a^2V(X)\)
いつ使うか:単位を変える・得点をポイントに換算するなど、1つの確率変数に一定の計算を施すとき。
\(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)(独立かどうかに関わらず常に成立)
\(V(X+Y)=V(X)+V(Y)\)(\(X,\ Y\)が独立のときだけ成立)
いつ使うか:同じ試行を複数回くり返す・2つの確率変数の合計を考えるとき。
要点整理 二項分布と正規分布の使い分け
2章では、この基本公式を毎回計算しなくても済む「専用の近道」(二項分布の公式)と、確率を面積として読み取る新しい道具(正規分布表)を学んだ。どちらを使うかは、聞かれている内容で判断する。
標準化 \(Z=\dfrac{X-\mu}{\sigma}\)(\(X\sim N(\mu,\sigma^2)\)なら\(Z\sim N(0,1)\))
二項分布の公式\(np\)、\(np(1-p)\)にそのまま代入すればよい。分布の形は関係ない。
標準化してから正規分布表\(p(z)\)を読む(4パターン、下の box)。二項分布でも\(n\)が大きければ正規近似でよい。
二項分布の公式\(P(X=k)={}_n\mathrm{C}_k\,p^k(1-p)^{n-k}\)を直接使う(正規分布は使えない)。
両側対称(\(\mu-z\sigma\le X\le\mu+z\sigma\))→ \(2p(z)\) / 平均から片側だけ → \(p(z)\) / 平均より先の端まで → \(0.5-p(z)\) / 片側の内側だけ(外側から内側を引く)→ \(p(z_2)-p(z_1)\)
要点整理 推定と仮説検定の型
3章では、母標準偏差\(\sigma\)が分かっている前提で標本平均から母平均・母比率を推測する方法と、逆に「ある仮説が正しいか」を検証する方法を学んだ。どちらも土台は同じ「標準誤差」という1つの量である。
母平均の推定:\(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) / 母比率の推定:\(\sqrt{\dfrac{\hat p(1-\hat p)}{n}}\)
\(\overline{x}\pm1.96\times\text{標準誤差}\)(信頼度95%のとき)
いつ使うか:標本から母平均・母比率を「範囲」で言い当てたいとき。
まず「変化していない」という仮説\(H_0\)(否定したい方の仮説。帰無仮説と呼ぶ)を立て、検定統計量\(z=\dfrac{\overline{x}-\mu_0}{\sigma/\sqrt{n}}\)を棄却域\(|z|>1.96\)(両側5%)と比べる
いつ使うか:「変化した」「差がある」といった主張を、データにもとづいて判断したいとき。
この章全体を横断する総合演習、全25問。目標時間は30分。答えを入力して「採点」を押すと○×が出るぞ。分数は「-1/2」のように入力。検定の結論は「棄却できる」または「棄却できない」で入力しよう。
わからないときは「解説を見る」で解き方を確認しよう。
1個のさいころを1回投げ、出た目が3の倍数なら15点、それ以外なら0点を得るとする。得点を \(X\) とするとき、期待値 \(E(X)\) を求めよ。
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問1の \(X\) について、分散 \(V(X)\) を求めよ。
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確率変数 \(X\) が \(E(X)=6\)、\(V(X)=9\) を満たすとき、\(Y=2X-5\) の期待値 \(E(Y)\) と分散 \(V(Y)\) を求めよ。
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独立な確率変数 \(X,\ Y\) が \(E(X)=4\)、\(E(Y)=7\)、\(V(X)=3\)、\(V(Y)=5\) を満たすとき、\(S=X+Y\) の期待値 \(E(S)\) と分散 \(V(S)\) を求めよ。
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成功確率 \(\dfrac{1}{4}\) の試行を独立に48回くり返す。成功した回数を \(X\) とするとき、期待値 \(E(X)\) を求めよ。
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問5の \(X\)(\(B\!\left(48,\dfrac{1}{4}\right)\))について、分散 \(V(X)\) と標準偏差 \(\sigma(X)\) を求めよ。
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\(X \sim N(80, 5^2)\) のとき、\(X=90\) を標準化した値 \(Z\) を求めよ。
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問7の \(X \sim N(80, 5^2)\) について、\(P(80 \le X \le 90)\) を求めよ。
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\(X \sim N(80, 5^2)\) のとき、\(P(70 \le X \le 90)\) を求めよ。
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\(X \sim N(80, 5^2)\) のとき、\(P(X \ge 87.5)\) を求めよ。
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1枚の硬貨を独立に144回投げるとき、表の出る回数を \(X\) とする。\(X\) を正規分布で近似するときの平均 \(\mu\) と標準偏差 \(\sigma\) を求めよ。
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母標準偏差18の母集団から、大きさ81の標本を抽出したところ、標本平均が140であった。母平均の95%信頼区間を求めよ。
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100人にアンケートを行ったところ、50人がある提案に賛成と回答した。賛成率(母比率)の95%信頼区間を求めよ。
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母標準偏差10の母集団について、帰無仮説 \(H_0: \mu = 60\) を有意水準5%で両側検定する。大きさ25の標本の標本平均が64であったとき、検定統計量 \(z\) と結論を求めよ。
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母標準偏差9の母集団について、帰無仮説 \(H_0: \mu = 40\) を有意水準5%で両側検定する。大きさ81の標本の標本平均が41であったとき、検定統計量 \(z\) と結論を求めよ。
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あるガチャガチャでは、大当たり(400円分のポイント)が確率0.1、中当たり(100円分)が確率0.3、はずれ(0円)が確率0.6で出るという。1回引いたときに得られるポイントを \(X\) とするとき、期待値 \(E(X)\) と分散 \(V(X)\) を求めよ。
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成功確率0.4のルーレットを独立に4回行うとき、ちょうど2回成功する確率を求めよ。
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\(X \sim N(40, 6^2)\) のとき、\(P(46 \le X \le 55)\) を求めよ。
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ある試験の得点 \(X\) は正規分布 \(N(55, 8^2)\) に従うとする。得点が上位2.28%に入るための最低点を求めよ。
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母標準偏差が12と分かっている母集団について、信頼度95%の信頼区間の誤差(\(1.96\sigma/\sqrt{n}\))を1.5以下にしたい。必要な標本の大きさの最小値を求めよ(小数点以下切り上げ)。
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2個のさいころを同時に投げ、出た目をそれぞれ \(X,\ Y\)(独立)とする。\(W=4X-3Y+5\) とするとき、期待値 \(E(W)\) と分散 \(V(W)\) を求めよ。
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ある工場で作られる部品の不良率は0.2であることがわかっている。この部品を独立に225個検査するとき、不良品の個数を \(X\) とする。\(X\) を正規分布で近似して、\(P(33 \le X \le 57)\) を求めよ。
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新しい薬を使うと回復までの日数が短くなると期待されている。従来の平均回復日数は10日(母標準偏差2.5日)であった。新しい薬を使った大きさ100の標本の標本平均が9.5日であったとき、有意水準5%で「回復日数が短くなった」と言えるか、片側検定(左側)で判断せよ。
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母標準偏差16の母集団から大きさ64の標本をとり、母平均の95%信頼区間を求めたところ \([46.08,\ 53.92]\) であった。この結果をもとに、有意水準5%で帰無仮説 \(H_0:\mu=54\) を両側検定で棄却できるかどうかを判断せよ(考え方:\(\mu_0\)が信頼区間に含まれなければ棄却できる)。
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ある工場で製造された9個の製品の重さ(g)を測定したところ、次のようになった。 \[40,\ 42,\ 44,\ 46,\ 48,\ 50,\ 52,\ 54,\ 56\] 標本平均 \(\overline{x}\) と不偏分散 \(u^2\) を求めよ。さらに、この不偏分散の平方根 \(u\) を母標準偏差の代わりに用いて、母平均の95%信頼区間を求めよ(下限・上限とも小数第2位まで)。
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答えだけでなく「なぜそうなるか」を文章と式で書く練習。模範解答と見比べて、書き方の型を身につけよう。
母平均の信頼区間は、なぜ「標本平均 ± 決まった値」という左右対称な形になるのか。標本平均の分布に関する性質(3章STEP1)と、正規分布の対称性に触れながら説明せよ。
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二項分布の期待値・分散の公式 \(E(X)=np\)、\(V(X)=np(1-p)\)(2章)は、1章で学んだ確率変数の一般公式(期待値の一般式・独立な確率変数の和の性質)から、どのようにして導かれると考えられるか説明せよ。
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先生「1人のお客さんの25回のうち、輪が入った回数をXとしよう。それぞれの回は独立で、入る確率はいつも0.2だね。」
花子「じゃあXは二項分布に従いますね。まず平均と分散を求めてみます。」
\(X\sim B(25,\ 0.2)\) であるとして、期待値 \(E(X)=\boxed{\text{ア}}\)、分散 \(V(X)=\boxed{\text{イ}}\) を求めよ。
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先生「1回成功するごとに、10ポイントのスタンプカードにスタンプを押してあげよう。」
25回のうち成功した回数を\(X\)とし、もらえるスタンプの合計を\(Y=10X\)とするとき、期待値 \(E(Y)=\boxed{\text{ウエ}}\)、分散 \(V(Y)=\boxed{\text{オカキ}}\) を求めよ。
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先生「成功回数 \(X\) が、平均から標準偏差2つ分の範囲(\(\mu-2\sigma\)から\(\mu+2\sigma\)まで)に入る確率を、正規分布表を使って調べてみよう。」
この範囲は \(\boxed{\text{ク}}\) 回以上 \(\boxed{\text{ケ}}\) 回以下であり、正規分布表よりその確率はおよそ \(\boxed{\text{コサ.シス}}\)%である。
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太郎「新しいラインから大きさ100個の標本をとって重さを測ったら、標本平均は202gでした。」
先生「まずは母平均の95%信頼区間を求めて、どれくらいの範囲に真の平均がありそうか見てみよう。」
母標準偏差5g、標本の大きさ100個、標本平均202gとして、母平均 \(\mu\) の95%信頼区間を求めると \(\boxed{\text{アイウ.エオ}} \le \mu \le \boxed{\text{カキク.ケコ}}\)(g)である。
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先生「では、実際に検定してみよう。有意水準5%で、母平均が従来の200gから変化したかどうかを両側検定してみよう。」
帰無仮説 \(H_0:\mu=200\) を有意水準5%で両側検定する。検定統計量は \(z=\boxed{\text{サ}}\) である。結論として正しいものを次から選び、その番号を \(\boxed{\text{シ}}\) に入れよ:1.棄却できる/2.棄却できない。
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先生「実は、信頼区間だけを見ても、この検定と同じ結論が判断できるんだ。」
(1)の信頼区間 \([201.02,\ 202.98]\) の中に、帰無仮説の値 \(\mu_0=200\) が含まれるかどうかに着目すると、有意水準5%の両側検定で \(H_0:\mu=200\) についてどちらが正しいと判断できるか。次から選び、その番号を \(\boxed{\text{ス}}\) に入れよ:1.棄却できる/2.棄却できない。