この章で学ぶこと
「式と証明」は数IIの最初の章であり、数Iの第1章「数と式」で学んだ展開・因数分解の技術を、2次から3次へと一段階引き上げるところから始まる。整式の割り算という新しい道具を身につけたあと、その道具を使って「どんな\(x\)を代入しても常に成り立つ式(恒等式)」の未知の係数を求める方法へと進み、最後は等式・不等式そのものを筋道立てて証明する技術にたどり着く。ここで身につける「差をとって0になることを示す」という証明の型と、整式の割り算の等式\(A=BQ+R\)は、次の第2章「複素数と方程式」で学ぶ剰余の定理・因数定理の土台にそのまま使われる。また、式を正確に展開・整理する力は、数IIの後半で学ぶ微分法・積分法の計算処理にも欠かせない基礎体力になる。
学習の順路
下から順番に読み進めよう。1で3次式の公式と二項定理という「新しい道具」を手に入れ、2でその道具を使う場面(整式の割り算・分数式)を広げ、3・4でそれらを土台にした「恒等式」「証明」という、より論理的な考え方へ進む、という流れになっている。
- 1. 3次式の展開・因数分解と二項定理 ― 3次の乗法公式・因数分解公式、そして二項定理と一般項の使い方を学ぶ。
- 2. 整式の割り算・分数式 ― 整式の割り算の等式\(A=BQ+R\)と、分数式の約分・乗除・通分を学ぶ。
- 3. 恒等式 ― 係数比較法・数値代入法という2つの手段で、恒等式の未知の係数を求める。
- 4. 等式・不等式の証明 ― 差をとる証明の基本方針と、相加平均・相乗平均の関係を使った最小値の求め方を学ぶ。
要点整理 3次式の公式と二項定理
この章の最初に出てきた公式は、どれも「何を求められているか」で使い分ける。丸暗記するのではなく、問題文のどの言葉が公式を呼び出しているかを意識しよう。
\((a+b)^3 = a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)
\((a-b)^3 = a^3-3a^2b+3ab^2-b^3\)
\(a^3+b^3 = (a+b)(a^2-ab+b^2)\)
\(a^3-b^3 = (a-b)(a^2+ab+b^2)\)
3次の乗法公式を使う。\((a-b)^3\)のときだけ符号が「+-+-」と交互になる(\((a+b)^3\)は全項が+)。真ん中2項の係数はどちらも3。
\(a^3\pm b^3\)の公式を使う。かっこの中の符号は展開の公式と逆になる点に注意。
二項定理の一般項 \(T_{r+1}={}_n\mathrm{C}_r a^{n-r}b^r\) を使う。全部展開しなくてよい。
要点整理 整式の割り算と分数式
整式の割り算の等式は、この章の後半(恒等式・証明)でも繰り返し道具として使われる、いちばんの基本装備。分数式の計算は、数の分数とまったく同じ規則で進めればよい。
実際に割り算をして出てきた余りの式を\(0\)とおき、未知の定数の値を決める。
\(A=BQ+R\)にそのまま代入して展開するだけでよい。
まず分子・分母を因数分解する。約分はそこから共通因数を消し、加減は最小公分母で通分する。
要点整理 恒等式の解き方
未知の係数を求める方法は2つある。どちらを使っても最後にたどり着く答えは同じだが、式の形によって「速い方」が変わる。
両辺を展開して整理し、同じ次数の項の係数どうしを比べる。展開した形どうしを比べるだけでよいとき・因数が見えていないときに向く。
都合のよい\(x\)の値(因数が0になる値)を代入して連立方程式を作る。式の中に\((x-\bigcirc)\)の因数がはっきり見えているとき・分数式で分母を払った直後に向く。
要点整理 証明の書き方(等式・不等式・相加相乗)
証明問題は「何を証明するか」で最初の一手が決まる。パターンを覚えるのではなく、次の判断の流れをそのまま使おう。
左辺-右辺を計算し\(0\)になることを示す。条件式があれば、それで1つの文字を消去してから比べる。
大きい方-小さい方を計算し、平方完成などで\(0\)以上になることを示す。
「正の数の和」の最小値を問われたら\(a+b\ge2\sqrt{ab}\)(\(a,b>0\))が使えないか疑う。
この章全体を横断する総合演習、全25問。目標時間は30分。答えを入力して「採点」を押すと○×が出るぞ。分数は「-1/2」のように入力。
わからないときは「解説を見る」で解き方を確認しよう。
\((x-3)^3\) を展開せよ。
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\(x^3-64\) を \((x-A)(x^2+Bx+C)\) の形に因数分解したとき、\(A,\ B,\ C\) の値を求めよ。
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\((x+2)^5\) の展開における \(x^2\) の項の係数を求めよ。
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\(x^3 - 3x^2 + 5x - 2\) を \(x - 2\) で割ったときの商を \(ax^2+bx+c\)、余りを \(R\) とするとき、\(a,\,b,\,c,\,R\) を求めよ。
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\(\dfrac{x^2-4}{x^2+x-2}\) を約分すると \(\dfrac{ax+b}{cx+d}\) の形になる。\(a,\,b,\,c,\,d\) を求めよ。
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\(\dfrac{x+1}{x-3} \times \dfrac{x-3}{x+4}\) を計算すると \(\dfrac{ax+b}{cx+d}\) の形になる。\(a,\,b,\,c,\,d\) を求めよ。
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\(\dfrac{1}{x+2} + \dfrac{3}{x-2}\) を計算すると \(\dfrac{ax+b}{x^2+cx+d}\) の形になる。\(a,\,b,\,c,\,d\) を求めよ。
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\(x^2+ax+b = (x-3)(x+7)\) が恒等式となるとき、\(a,\ b\) の値を求めよ。
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\(a(x+2)+b(x-1) = 5x+4\) が恒等式となるとき、\(a,\ b\) の値を数値代入法で求めよ。
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\(a>0\) のとき、\(a+\dfrac{36}{a}\) の最小値を求めよ。
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すべての実数 \(x\) について \(x^2+9 \ge 6x\) であることを証明せよ。
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\((3x-2)^5\) の展開における \(x^3\) の項の係数を求めよ。
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整式 \(A\) を \(x + 3\) で割ると商が \(x^2 - 2x + 4\)、余りが \(-5\) であるという。\(A = x^3 + ax^2 + bx + c\) とするとき、\(a,\,b,\,c\) を求めよ。
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\(\dfrac{9}{x(x+3)} = \dfrac{a}{x}+\dfrac{b}{x+3}\) が成り立つとき、\(a,\ b\) の値を求めよ。
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\(a+b=1\) のとき、\(a^3+b^3 = 1-3ab\) であることを証明せよ。
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\((a+b+c)^5\) の展開における \(a^2b^2c\) の項の係数を求めよ。
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整式 \(x^3+ax^2+bx-6\) が \(x-1\) で割り切れ、かつ \(x+2\) で割ると余りが \(-12\) であるとき、定数 \(a,\ b\) の値を求めよ。
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\(\dfrac{x^2-1}{x^2-5x+6} \div \dfrac{x+1}{x-2}\) を計算すると \(\dfrac{ax+b}{x+c}\) の形になる。\(a,\,b,\,c\) を求めよ。
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整式 \(P(x)\) を \((x-1)(x-2)\) で割ると余りが \(3x-1\) であるという。\(P(x)\) を \(x-1\) で割った余りと、\(x-2\) で割った余りをそれぞれ求めよ。
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\(x>1\) のとき、\(x+\dfrac{49}{x-1}\) の最小値を求めよ。
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実数 \(a,\ b\) について \(a^2+2b^2 \ge 2ab\) であることを証明せよ。
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\(a>0,\ b>0\) で \(a+b=4\) のとき、\(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}\) の最小値を求めよ。
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\(x+y=5,\ x^2+y^2=13\) のとき、恒等式を利用して \(xy\) の値と \(x^3+y^3\) の値を求めよ。
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\(998^3-1\) を、3次式の因数分解の公式を使って(電卓を使わず)計算せよ。
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実数 \(a,\ b,\ c\) が \(a+b+c=3\) を満たすとき、\(a^2+b^2+c^2\) の最小値を求めよ。
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先生「もとの立方体の体積は\(x^3\)cm³だね。すべての辺を\(a\)cmずつ伸ばすと、新しい立方体の1辺の長さはどう表せる?」
太郎「はい。\((x+a)\)cmです。」
先生「じゃあ、3次の乗法公式を使って、新しい体積\(V\)を\(x\)と\(a\)の式で表してみよう。」
新しい立方体の体積\(V\)を、3次の乗法公式を用いて\(x\)と\(a\)の整式で表すと \[ V = x^3+\boxed{\text{ア}}x^2a+\boxed{\text{イ}}xa^2+a^3 \] となる。ア、イに入る数を求めよ。
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先生「\(x=10\)、\(a=2\)のときで、体積がどれだけ増えたか計算してみよう。」
(1)の結果を利用すると、\(x=10\)cm、\(a=2\)cmのときの体積の増加量(\(V-x^3\))は \(\boxed{\text{ウエオ}}\)cm³ である。
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花子「反対に、すべての辺を短くしたらどうなるだろう?」 花子さんは同じ立方体から、すべての辺を\(b\)cmずつ短くした模型を作ることにした(新しい体積は\((x-b)^3\))。(1)の結果を利用すると、\(x=10\)cm、\(b=1\)cmのとき、体積の減少量(\(x^3-(x-b)^3\))は \(\boxed{\text{カキク}}\)cm³ である。
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先生「\(a>0,\ b>0\)で\(ab=16\)という条件があるね。まず\(a+b\)の最小値を考えてみよう。」
\(a>0,\ b>0\) で \(ab=16\) のとき、相加平均・相乗平均の関係を利用すると、\(a+b\) の最小値は \(\boxed{\text{ア}}\)、そのときの \(a,\ b\) の値はどちらも \(\boxed{\text{イ}}\) である。
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(1)の結果を利用すると、周の長さ \(L=2(a+b)\) の最小値は \(L=\boxed{\text{ウエ}}\) である。
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先生「実は看板を置く台の大きさの都合で、縦の長さ\(b\)は\(2\)m以上\(6\)m以下に制限されているんだ。」 この制限のもとでの \(L\) の最小値を求めると \(L=\boxed{\text{オカ}}\) である。
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答えだけでなく「なぜそうなるか」を文章と式で書く練習。模範解答と見比べて、書き方の型を身につけよう。
この章で学んだ「3次式の因数分解の公式」「整式の割り算の等式\(A=BQ+R\)」「恒等式の係数比較法・数値代入法」「等式・不等式の証明」は、一見バラバラな内容に見える。しかし、これらはすべて『2つの式が本当に等しい(ぴったり一致している)かどうかを確かめる』という1つの考え方でつながっている。このことを、それぞれの内容に軽く触れながら説明せよ。
模範解答を見る
\(a>0,\ b>0\) で \(a+b=6\) のとき、恒等式 \((a+b)^3=a^3+3ab(a+b)+b^3\) を用いて \(a^3+b^3\) を \(ab\) の式で表し、さらに相加平均・相乗平均の関係を用いて \(a^3+b^3\) の最小値を求めよ。