この章で学ぶこと
「極限」は数III全体の出発点であり、これまで数B「数列」や数I・数IIの関数(2次関数、三角関数、指数・対数関数)で扱ってきた「値」の話を、「限りなく近づく」という新しい視点で捉え直す単元である。前半(1〜2)では、数列の極限と関数の極限という2つの「近づき方」を学び、分数式の変形・根号の有理化・はさみうちの原理といった、不定形を処理するための計算テクニックを一通りそろえる。後半(3)では、その極限の言葉を使って「連続」という性質を厳密に定義し、中間値の定理という強力な存在証明の道具、そして今後何度も登場する重要な定数 \(e\) を導入する。ここで身につけた「\(x\to a\) のときの\(f(x)\)の行き先」という考え方は、次章「微分法」で微分係数を定義するときにそのまま使われ(微分係数とは平均変化率の極限にほかならない)、さらにその先の積分法にもつながっていく。極限は計算テクニックの集まりであると同時に、数III全体を貫く「言葉」でもある。
学習の順路
下から順番に読み進めよう。1で「数列」の極限の考え方と計算テクニックを固め、2でそれを「関数」に拡張して片側極限という新しい視点を加え、3で極限の言葉を使って「連続」を定義し、中間値の定理と \(e\) にたどり着く、という流れになっている。
- 1. 数列の極限・無限級数 ― 数列の収束・発散、公比 \(r\) による \(r^n\) の場合分け、分数式・根号式の極限計算、はさみうちの原理、無限等比級数の和を学ぶ。
- 2. 関数の極限 ― 右側極限・左側極限という新しい視点、\(0/0\)の不定形の処理(因数分解・有理化)、\(x\to\infty\)の極限、三角関数の極限公式\(\sin x/x\to1\)を学ぶ。
- 3. 関数の連続性 ― 極限の言葉による連続の定義、連続になるように定数を定める問題、中間値の定理による解の存在証明、ネイピア数\(e\)の定義を学ぶ。
要点整理 数列の極限と計算テクニック
数列の極限で真っ先に押さえるべきは「式の見た目」で処理方法を選び分けること。テスト直前は、まずこの見分け方だけを思い出せれば十分だ。
\(r > 1\):\(r^n \to \infty\) / \(r=1\):\(r^n=1\)(一定) / \(-1<r<1\):\(r^n\to0\) / \(r=-1\):振動 / \(r<-1\):振動(絶対値が増大)
分母の最高次の項で分子・分母を割る。\(1/n,\ 1/n^2,\dots\to0\)を使ってシンプルにする。
共役(符号を変えた式)を分子・分母に掛けて有理化し、根号を分子だけに残す。
その項の値がつねに一定の範囲(例:\(-1\)以上\(1\)以下)に収まることを使い、上下から挟む(はさみうちの原理)。
要点整理 関数の極限の使い分け
関数の極限は数列の極限の考え方に「右から」「左から」という近づき方の区別が加わっただけ。不定形の処理テクニックは数列のときとほぼ共通しているので、新しく覚えることは少ない。
手順1 右側極限 \(\displaystyle\lim_{x\to a+0}f(x)\)(\(a\)より大きい値から近づける)を調べる
手順2 左側極限 \(\displaystyle\lim_{x\to a-0}f(x)\)(\(a\)より小さい値から近づける)を調べる
手順3 両者が一致すればその値が \(\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)\)。不一致なら極限は存在しない
分子・分母が多項式なら因数分解して共通因数を約分。根号を含むなら共役を掛けて有理化。どちらも「\(0/0\)を作っている原因の因数」を消してから代入する。
分子の次数 < 分母の次数 → 極限は\(0\)。分子の次数 = 分母の次数 → 極限は最高次の係数の比。分子の次数 > 分母の次数 → 発散。
要点整理 連続性・中間値の定理・\(e\)
この章の最後の柱は、極限の言葉を使って新しい概念(連続)を定義し、それを使って新しい定理(中間値の定理)と新しい定数(\(e\))にたどり着く、という展開になっている。定義に一度戻れば、あとはすべてそこからの応用だ。
この章全体を横断する総合演習、全25問。目標時間は30分。答えを入力して「採点」を押すと○×が出るぞ。\(\infty\)は「inf」、振動・発散は「発散」と入力しよう。分数は「-1/2」のように入力。
わからないときは「解説を見る」で解き方を確認しよう。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \left(\dfrac{3}{4}\right)^n\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} 6^n\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} (-4)^n\) について、収束・発散を判定せよ。
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\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \dfrac{3n+2}{n-1}\) を求めよ。
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初項6、公比 \(\dfrac{1}{3}\) の無限等比級数の和を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to3}\dfrac{x^2-x-6}{x-3}\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to0}\dfrac{\sin5x}{x}\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{5x+1}{2x-3}\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{x+2}{x^2+1}\) を求めよ。
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\(f(x)=\dfrac{1}{x-3}\) について、\(\displaystyle\lim_{x\to3+0}f(x)\)、\(\displaystyle\lim_{x\to3-0}f(x)\) をそれぞれ求めよ。
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次の関数が \(x=4\) で連続となるように、定数 \(a\) の値を定めよ。 \[ f(x) = \begin{cases} \dfrac{x^2-16}{x-4} & (x \neq 4) \\ a & (x = 4) \end{cases} \]
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次の関数が \(x=2\) で連続となるように、定数 \(a\) の値を定めよ。 \[ f(x) = \begin{cases} 2x+a & (x \le 2) \\ x^2+1 & (x \gt 2) \end{cases} \]
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\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \dfrac{\cos n}{n}\) を求めよ。
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循環小数 \(0.555\ldots\) を分数で表せ。
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中間値の定理を用いて、方程式 \(x^3-2x-5=0\) が区間 \([2,\ 3]\) に実数解をもつと言えるか。言えるなら「ある」、言えないなら「ない」と答えよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to0}\dfrac{\sqrt{x+9}-3}{x}\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \left(\sqrt{n^2+5n} - n\right)\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to0}\dfrac{1-\cos3x}{x^2}\) を求めよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to2}\dfrac{3x^2+ax+b}{x-2}=5\) が成り立つように定数 \(a,\ b\) の値を定めよ。
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中間値の定理を用いて、方程式 \(x^3-6x+2=0\) が区間 \([0,\ 1]\) に実数解をもつと言えるか。言えるなら「ある」、言えないなら「ない」と答えよ。
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無限級数 \(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{3n+1}{n+2}\) の収束・発散を判定せよ。
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\(\displaystyle\lim_{x\to-\infty}\left(\sqrt{x^2+4x}+x\right)\) を求めよ。
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\(f(x)=x^2\) について、\(\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(2+h)-f(2)}{h}\) を求めよ。
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次の関数が \(x=0\) で連続となるように、定数 \(a\) の値を定めよ。 \[ f(x) = \begin{cases} \dfrac{\sin3x}{x} & (x \neq 0) \\ a & (x = 0) \end{cases} \]
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\(a=\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{6x+1}{3x-2}\)、\(r=\displaystyle\lim_{x\to0}\dfrac{\sin x}{2x}\) とするとき、初項\(a\)、公比\(r\)の無限等比級数の和を求めよ。
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答えだけでなく「なぜそうなるか」を文章と式で書く練習。模範解答と見比べて、書き方の型を身につけよう。
この章は「数列の極限」「関数の極限」「関数の連続性」という3つの節で構成されている。この3つがどのようにつながっているか、また、この章で学んだ考え方が次章「微分法」にどう活かされるかを説明せよ。
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次の3つの極限をそれぞれ求め、それぞれどの処理方法(最高次の項で割る/有理化する/公式を使う、など)を選んだか、選んだ理由も含めて説明せよ。
(1) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \dfrac{4n-1}{2n+3}\)
(2) \(\displaystyle\lim_{x\to0} \dfrac{\sqrt{x+1}-1}{x}\)
(3) 初項8、公比\(-\dfrac14\)の無限等比級数の和
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先生「この薬は、24時間経つと体内の量がちょうど\(\dfrac15\)倍になることが分かっているとしよう。花子さんが100mgずつ毎日服用し続けるとき、\(n\)回目の服薬直後の体内の薬の量を\(a_n\)(mg)とすると、\(a_1=100\)で、\(a_{n+1}=\dfrac15a_n+100\)という関係が成り立つね。」
花子「服薬を何回も繰り返すと、\(a_n\)はどんな値に近づいていくのか気になります。」
数列\(\{a_n\}\)が一定の値\(\alpha\)に収束すると仮定すると、漸化式\(a_{n+1}=\dfrac15a_n+100\)の両辺で\(n\to\infty\)とすることで\(\alpha=\dfrac15\alpha+100\)が成り立つはずである。これを解くと \(\alpha=\boxed{\text{アイウ}}\) である。また、この\(\alpha\)を用いて漸化式を \(a_{n+1}-\alpha=\dfrac15(a_n-\alpha)\) の形に変形すると、\(a_1-\alpha=\boxed{\text{エオ}}\)(符号もつけて入力)となる。
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(1)より、数列\(\{a_n-\alpha\}\)は初項\(a_1-\alpha\)、公比\(\dfrac15\)の等比数列である。これを用いて\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n\)を求めると \(\boxed{\text{カキク}}\) である。
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花子「では、服薬直後の体内の薬の量が120mg以上になるのは、何回目の服薬直後からですか。」
(2)で求めた一般項 \(a_n=125-25\left(\dfrac15\right)^{n-1}\) を用いて、\(a_n\ge120\)を満たす最小の\(n\)を求めると \(n=\boxed{\text{ケ}}\) である。
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\[ T(x) = \begin{cases} -x^2+2x+1 & (0 \le x \lt 5) \\ -2x+b & (5 \le x \le 10) \end{cases} \] 先生「\(b\)の値はまだ決まっていない。観測データが\(x=5\)のところで途切れずにつながって見えるように、\(T(x)\)が\(x=5\)で連続になるように\(b\)を決めよう。」
\(\displaystyle\lim_{x\to5-0}T(x)\) を求めよ。\(\boxed{\text{コサ}}\)(符号もつけて入力)
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\(T(x)\)が\(x=5\)で連続になるように、定数\(b\)の値を定めよ。\(b=\boxed{\text{ス}}\)(符号もつけて入力)
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太郎「気温が0℃になる瞬間が、朝の観測開始から何時間後にあるか気になりますね。」
先生「(2)で\(b=-4\)と決まったから、\(5\le x\le10\)では\(T(x)=-2x-4\)だ。この区間で\(T(x)\)の符号がどうなるか確かめてごらん。」
太郎「\(T(5)=-14\)、\(T(10)=-24\)で、しかも1次関数だから区間全体で負のままですね。」
先生「その通り。だから0℃になる瞬間があるとすれば、残りの区間\(0\le x\lt5\)の中だけだ。」
気温が0℃になる時刻の1つが、区間\(0\le x\lt5\)の中の、整数\(n\)を用いて\(n\lt x\lt n+1\)と表せる範囲に存在することを、中間値の定理を用いて示すとき、\(n\)の値を求めよ。\(n=\boxed{\text{セ}}\)