この章で学ぶこと
「数と式」は数学Iの最初の章であり、これから先のすべての数学で使う計算力の土台をつくる章だ。式の展開・因数分解は、後で学ぶ2次関数や2次方程式の章で式を整理したり、グラフが\(x\)軸と交わる点を求めたりするときに何度も使う基本操作になる。実数・根号の計算は、無理数を含む値を近似せずに正確に扱う技術で、後の章で座標や長さを扱うときに欠かせない。1次不等式・絶対値は、大小関係や「距離」という考え方を式で正確に表す練習であり、次の章「集合と命題」で条件や証明を扱うときの土台にもなる。この章の5つのテーマは一見ばらばらに見えるが、どれも「式を正確に変形し、数の性質を根拠をもって説明する」という数学I全体を貫く姿勢を鍛えるものだ。
学習の順路
基本的には上から順に進めるのがおすすめ。特に1と2は「展開の逆が因数分解」という関係で直結しているので、この順番を崩さないほうがよい。3〜5はそれぞれ独立して読めるが、4→5は「向き」と「距離」という似た注意点を扱うので続けて学ぶと理解が深まる。
2. 因数分解 展開の逆操作。共通因数・公式・たすき掛け・置き換えを使い分けて、式を積の形に戻す。
3. 実数・根号の計算 有理数と無理数を区別し、根号の簡約・有理化・整数部分と小数部分の考え方を身につける。
4. 1次不等式 不等号の向きに注意しながら、1次式の大小関係を解く。連立不等式は共通範囲を読み取る。
5. 絶対値 絶対値を「原点や点\(a\)からの距離」としてとらえ、方程式・不等式・場合分けに応用する。
要点整理 1:展開と因数分解は「表と裏」
展開は式を「ばらす」操作、因数分解は式を「まとめる」操作。同じ公式を逆向きに使っているだけなので、次の4つは展開・因数分解の両方でワンセットに覚えておくと効率がよい。
公式2 \((a-b)^2 = a^2-2ab+b^2\) ⇔ \(a^2-2ab+b^2=(a-b)^2\)
公式3 \((a+b)(a-b) = a^2-b^2\) ⇔ \(a^2-b^2=(a+b)(a-b)\)(真ん中の項が消えて平方の差になる)
公式4 \((x+a)(x+b) = x^2+(a+b)x+ab\) ⇔ \(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
・展開は、式の形を整理して次の計算(方程式や不等式を解く、値を代入する)につなげたいときに使う。\(x\)の係数が1でない\((ax+b)(cx+d)\)は4つの積をすべて書き出せば必ず展開できる。
・因数分解は、式が0になる\(x\)を知りたいとき、約分したいとき、数値計算や式の値を工夫して求めたいときに使う。手順は「共通因数でくくる」→「公式1〜4に当てはまるか」→「たすき掛け(\(x^2\)の係数が1でないとき)」→「それでも無理なら置き換えや次数の低い文字で整理」の順に試すのが確実。
要点整理 2:根号の計算は「2つのルールと有理化」
根号の計算に必要なルールはたったの2つ。あとはこの2つの組み合わせで、簡約・四則演算・有理化のすべてが説明できる。
ルール2(2乗を外す) \(\sqrt{a^2} = |a|\)(\(a\)がマイナスでも根号を外すと必ずプラスになる)
要点整理 3:不等式と絶対値は「向き」と「距離」
1次不等式で最後まで意識すべきなのは「向き」、絶対値で最後まで意識すべきなのは「距離」。この2つのキーワードを軸に整理すると、場合分けの多いこの2テーマもすっきり見通せる。
\(x>\)◯ と \(x<\)△(◯\(<\)△)
→ ◯\(<x<\)△(有限の範囲)
\(x>\)◯ と \(x>\)△
→ 条件がきびしい方だけが残る
\(x>\)◯ と \(x<\)△(◯\(\ge\)△)
→ 重なる場所がなく解なし
\(|x|=a\) → \(x=a\) または \(x=-a\)
\(|x|<a\) → \(-a<x<a\)
\(|x|>a\) → \(x<-a\) または \(a<x\)
中身の符号が変わる境界で場合分けし、各場合で絶対値を外して解く。求めた解が、その場合の前提条件を満たすかを必ず確認してから答えを採用する。
要点整理 4:テスト前のチェックリスト
問題を見た瞬間に「どの手順から試すか」が浮かぶように、5テーマそれぞれの思考の入り口をリストにしておく。
この章5テーマの総合演習・全25問。目標時間30分。答えを入力して「採点」を押すと○×が出るぞ。不等式の範囲は「x<4」「x>=2」のように <= や >= を使って入力しよう。有理化の結果を4つの欄に分ける問題は \(\dfrac{ア\sqrt{イ}+ウ}{エ}\) の形で、整数だけの答えは√の欄に1、+の欄に0のように入れよう。
わからないときは「解説を見る」で解き方を確認しよう。
\((x+6)(x-4)\) を展開せよ。
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\((3x-2)^2\) を展開せよ。
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\((2x+5)(2x-5)\) を展開せよ。
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\(x^2-3x-18\) を因数分解せよ(ア≦イで入力)。
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\(3x^2+11x-4\) を \((アx+イ)(ウx+エ)\) の形に因数分解せよ(ア≦ウ、ア=ウのときはイ≦エで入力)。
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\(\sqrt{98}\) を簡約せよ。
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\(\sqrt{27}+\sqrt{12}\) を計算せよ。
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\(\dfrac{6}{\sqrt{6}}\) を有理化せよ。
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\(5x-3<2x+9\) を解け。
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\(-4x+7\le-1\) を解け。
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\(|x-5|=3\) を解け。
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\(|x+2|<6\) を解け。解は \(\text{ア}<x<\text{イ}\) の形になる。
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\(\sqrt{13}\) の整数部分を \(a\)、小数部分を \(b\) とする。\(a\) と \(b\) を求めよ。(\(b\) は式のまま入力)
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次の連立不等式を解け。\(\begin{cases}x-2>1\\ 3x+1\le16\end{cases}\) 解は \(\text{ア}<x\le\text{イ}\) の形になる。
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\(2x^2-8\) を \(2(x+ア)(x+イ)\) の形に因数分解せよ(ア≦イで入力)。
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\(x=13,\ y=10\) のとき、\(x^2-y^2+3x-3y\) の値を、因数分解を利用して求めよ。
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\(x<\sqrt{50}\) を満たす最大の整数 \(x\) を求めよ。
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\(|\sqrt{3}-2|\) を簡単にせよ(根号を含まない数と根号を含む項の差の形にすること)。
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\(|2x-3|\le x+3\) を解け。解は \(\text{ア}\le x\le\text{イ}\) の形になる。
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\(\dfrac{1}{\sqrt{5}-1}\) を有理化し、その値より小さい最大の整数を求めよ。
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\((\sqrt{3}+\sqrt{2})^2-(\sqrt{3}-\sqrt{2})^2\) の値を求めよ。
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\(n\) を整数とする。連続する3つの整数 \(n-1,\ n,\ n+1\) のうち、最も大きい数と最も小さい数の積は、真ん中の数 \(n\) の2乗より、どれだけ小さいか。因数分解を利用して答えよ。
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数直線上で点Pの座標が \(-2\)、点Qの座標が \(x\) である。PQ間の距離が\(5\)未満となる\(x\)の範囲を、絶対値を用いた不等式で表して解け。また、その範囲に含まれる整数\(x\)の個数を求めよ。
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\(\dfrac{\sqrt{7}+\sqrt{5}}{\sqrt{7}-\sqrt{5}}\) を有理化せよ。
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ある商品の表示重量は \(500\)g である。実際の重さ\(x\)gと表示重量とのずれの絶対値が\(3\)g以内であることが保証されているとき、\(x\)の満たす範囲を絶対値を用いた不等式で表して解け。
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花子「通路の面積だけを取り出すには、どう計算すればいいのかな。」
太郎「土地全体の面積から、花壇の面積を引けばいいんじゃないかな。」
通路の面積を \(S\)(\(\text{m}^2\))とする。\(S\) を \(x\) について整理し、さらに共通因数でくくった形にもせよ。
\(S = (x+4)^2-x^2 = \boxed{\text{ア}}x+\boxed{\text{イウ}} = \boxed{\text{エ}}(x+\boxed{\text{オ}})\)
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太郎「通路の面積を\(80\text{m}^2\)以下にしたいな。」花子「じゃあ(1)の式を使って不等式を作ってみよう。」
(1)の結果を利用し、\(S\le80\) となる \(x\) の範囲を求めよ(\(x>0\))。解は \(\boxed{\text{カ}}<x\le\boxed{\text{キ}}\) の形になる。
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太郎「\(x\)は整数になるように区切りたいんだけど、(2)の範囲だと\(x\)は何通り考えられる?」
(2)で求めた範囲を満たす整数 \(x\) は何通りあるか求めよ。
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誤差の許容範囲を\(4\)mm以下とするとき、合格品となる \(x\) の範囲を絶対値を用いた不等式で表し、それを解け。
\(|x-250|\le4\) より \(\boxed{\text{アイウ}}\le x\le\boxed{\text{エオカ}}\)
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合格品の割合を上げるため、誤差の許容範囲を\(5\)mm以下に広げることにした。新しい合格範囲を求め、その範囲の長さ(最大値\(-\)最小値)も求めよ。
\(\boxed{\text{キクケ}}\le x\le\boxed{\text{コサシ}}\)、範囲の長さは \(\boxed{\text{スセ}}\)mm
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誤差の許容範囲を \(t\)mm以下(\(t\)は正の整数)としたとき、合格範囲の長さが\(16\)mmになるようにしたい。\(t\)の値を求めよ。
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答えだけでなく「なぜそうなるか」を文章と式で書く練習。模範解答と見比べて、書き方の型を身につけよう。
「数と式」の章で学んだ内容は、一見すると別々の話に見えるが、実はつながっている部分がある。次の(a)(b)の2点を通して、そのつながりを説明せよ。
(a) 因数分解の公式 \(a^2-b^2=(a+b)(a-b)\) が、根号を含む分数の有理化でどのように使われるか。
(b) 絶対値 \(|x|\) が「距離」として定義されることが、不等式 \(|x|<a\) の解を求めるときにどう役立つか。
模範解答を見る
\(x=\sqrt{5}+\sqrt{3}\)、\(y=\sqrt{5}-\sqrt{3}\) のとき、\(x+y\)、\(xy\)、\(x^2+y^2\) の値をそれぞれ求めよ。求め方の方針も含めて記述せよ。